婆裟羅 短篇 夢
□おつかい
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何時も何時も団子を買いに行く店がある。
「…ほんっと、忍使いが荒いんだから。」
なんて溢しながらも、俺様はいそいそと何時もの忍装束から濃い深緑の着流しへと着替える。
帯は柿色で大人っぽく。
姿見で全身を確認し、帯よりも明るい橙色の髪を撫でつける。
…よしっ。
完璧だ。
竜の旦那じゃないけど、見事なまでの伊達男っぷりだ!
「〜♪」
俺様はご機嫌で上田城を後に、城下の団子屋を目指した。
小さな茶店兼団子屋が、俺様の目指す場所。
客が3〜4人座れる長椅子が二つ店の前に置かれ、中も2〜3人座れればいい小さな店。
「や、かのんちゃん。」
「佐助さん!いらっしゃいっ。」
2人いた客の相手をしていた綺麗な長い黒髪を簡素に結い上げた少女が振り向いた。
いや、少女なんて失礼だな。
かのんちゃんは17歳、立派な大人の女性だ。
お祖母ちゃんと2人でこの店を切り盛りしているかのんちゃん。
親父さんは戦で4年前に、お袋さんは流行り病で半年前に亡くしたんだとか。
くりくりとした大きな瞳と小さなサクランボ色の唇が何とも愛らしい。