婆裟羅 短篇 夢

□1/3の純情な感情
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「絶っっ対、嫌。」





…甲斐―――。

武田信玄の居城では、先程から進展しない会話が繰り返されていた。



「かのん…。」

「い・や!」

「…かのん…。」

「そんなに伊達が大事ならば、父上が嫁げばよろしいでしょう。」



広い部屋で信玄と向き合い、表情を崩す事なく無理を言って退けるのは1人娘のかのん姫。



戦国乱世の常で身分の高い家に生まれた娘は、政略の道具以外のナニモノでもない。

ここ、甲斐の武田家でもそれは同じだった。





奥州、伊達家との同盟の為、かのんは伊達家当主・政宗の側室として嫁ぐ運びとなった。
周囲を敵国に囲まれた甲斐としては、奥州との同盟は戦況が有利になる願ってもいない申し出。

…そう…この同盟話は政宗本人から信玄に提案した異例の妥協であった。

無論、かのんは武田が裏切らないと保証する為の人質で、伊達家からも重要な人物が甲斐に来る。



「…かのん。」

「い・や・で・す!」



有無を言わせずスッと立ち上がると、ピシャリと襖を閉めて出て行ってしまう。
残された信玄は深い深い溜め息を静かに溢した。


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