FF7 SHORT DREAM SIDE・L

□honey!honey!honey!
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書類を走るペン、キーボードを叩く手。
月に1度の追い込み作業、証拠なんかカケラも残せない調査課もこの日だけはきちんと書面を提出しなければならない。
真面目にやる者が殆どだが、古株になればなる程その無駄さに労働意欲はだだ下がる。

…だって結局破棄するんだよ?
燃やすんだよ?

紙と電気の無駄遣いである。
報告書の末路を知ってるだけに、書いたって無意味じゃんと思うのは仕方ない。



「クヒヒヒ…暇しているようだね。」

「!?」



背凭れに体重の殆どをかけ、デスクに預けた長い足を組みながら葉巻を煙らせていたレジェンド。
にょ、と脇から現れた人物に驚いてバランスを崩してしまった。

ガシャーンッ。
カラカラとキャスターが鳴る。



「――〜っ、てぇ…。」

「ヒッヒッヒッ、そんな事で壊れる体じゃないだろう。なんせ死神だ、キミは。」

「あのなぁ…何しに来たのよ、宝条統括?」



猫背を揺らして笑う宝条は、コトリとレジェンドのデスクにビーカーを置いた。



「…何、これ。」

「興奮剤…まぁ、キミたち下衆な輩流に言えば媚薬か。」

「…へぇ。で?」

「飲みたまえ。」

「やなこった!なんでオレが飲まなきゃなんないのよ?!」



頼み方がムカつくから飲んでなんかやらない。
もとい、なんでこんな怪し気なモン飲まなきゃなんないんだ。



「タークスだろう。」

「…タークスだから何飲んでも平気なワケじゃないんスけど?」

「キミは確か、ある程度の毒に耐性があっただろう。」

「あったからなんだってのよ!誰が自ら進んで危険な橋渡るかっ。」



確かに。
普通なら救急車もんの毒なら、レジェンドにとっちゃ手足が痺れる程度。
しかして効かないワケではない、体調によっては効き目抜群な時だってあるのだ。
無論、体調崩すなんてヘマは滅多にしないが。



「セフィロスにでも飲ませろよ、あいつなら死なないっしょ。」

「アレは私が作った最強の化け物だ。」

「自慢?何、自分のあたま自慢しに来たの?だったらさっさと帰れ、邪魔だ!」

「私は化け物用の興奮剤を作ったんじゃない。当然被験者は普通の人間でなくてはならん。」

「じゃ自分で飲めよ!!」

「私が飲んだら誰がデーターを取るのかね?」

「助手に飲ませろ!無駄に何人もいんだからっ。」

「何かあったらどうするのかね?いっそ死んでくれればいいが、生半可に生きてられて後遺症でも残ったら会社が慰謝料払わねばならんだろう。」

「―――社では媚薬の開発は依頼してませーん、自己責任です。」

「非協力的だな、キミは。よろしい、ではこのあいだキミが非常階段に開発部門の秘書を連れ込んでた証拠写真を「さ、ラボ行きますか!」クヒヒッ、物解りのいい人間は嫌いではないよ。」



さぁさぁさぁとレジェンドに押され、宝条はタークスのオフィスをあとにした。
ビーカーとともに。



「…な、んだったんスかね?今の。」

「オッサン…浮気してンぞ、と。いいのか、カノン?」

「開発部門の秘書でしょ?知ってるもの…それよりさっさと報告書回して。それ、わたしが書き込むとこもあるんだからね?」

「へーぃ…オッサン、無駄死にか、と。」



カリカリ、カタカタカタ。
何事もなかったように、それぞれ書類に向かう。


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