戦国BASARA

□世界はそれを愛って呼ぶんだぜ
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深夜―――闇に紛れて1人の忍が四国の地に降り立った。
まるてそこだけ燃えているような橙色の髪と迷彩柄の忍装束に身を包んだ男―――猿飛佐助である。

武田信玄の命により、四国の鬼・長曾我部元親の偵察の為に来た。
元親の無類の絡繰り好きは、近隣諸国の敵対する武将たちにして見れば、常に気を配らなければならない脅威であるとの噂は甲斐にも届いている。

甲斐と四国は離れている、しかし油断は出来ない。

何せ1機で兵士何百人以上もの働きをするのだ、これはもう脅威なんて次元の問題では無いのかも知れなかった。



(はぁ〜…やっと着いた。)



やれやれと佐助は肩を叩き腰を伸ばす。
忍と言えど人の子、化け物では無いのだから遠距離の移動は流石に疲れる。

そっと天井裏に忍び込み、予め見当を付けておいた元親の私室の上までやって来た。



(…あ、まだ起きてる……。)



音も無くずらした天井板の隙間から、チラチラと揺れる灯りが見えた。

文机に向かって、何やら広げた紙を一心不乱に見つめている。



(…?)



何を見ているのだろう?

大きな背中に隠れて、よく見えない。

暫く観察していると、元親はぐ…と大きく両腕を伸ばして隣りの部屋の襖を開けた。
布団が見えたと言う事は褥だろう、どうやらやっと寝るらしい。










朝、食事の少し前に起きては大きな絡繰りを整備し、たまに海に出て夜は書物や絡繰りの設計―――この3日間の元親の行動である。



(…ふぅ〜ん、熱心だねぇ…。)



ふぁ、と音も無く欠伸を零す。

四国に来て休む間も無く元親を偵察、細心の注意を払ってのこの潜入に疲れていた。

今夜も元親は、遅くまで絡繰りの設計図と睨めっこ。
特に何が起きる訳でも、する訳でも無さそうだ。



(―――ちょっと…だ、け…。)



とろん、と瞼が重くなる。


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