戦国BASARA

□ばすたいむ
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もうもうと立ち込める湯気、屈指の温泉郷が直ぐ側にあるのを利用して取り寄せた湯の花を溶かしたお湯。
潮風で冷え切った体には、熱いくらいのこの温もりが丁度良い。



「元親さん、見ーっけ!」

「ぶっ…?!」



がらり、と遠慮無く開けられた戸口には、橙の髪の男が前も隠さずに全裸で立っていた。



「さ、佐助…?オメェ、何で…。」

「何でって…仕事帰りにちょっくら寄らして貰ったんだけどさ、元親さん湯浴みだって言うし俺様も頭から血ぃ被っちゃったから丁度良いと思って。」



桶に湯を汲み、指先を入れて佐助は顔をしかめる。



「…熱い。」

「あぁ?丁度良いぜ?」

「元親さんには良くても、俺様には熱いの!」



側の水桶から水を汲み、桶の湯をうめてから体に掛ける。
同じように頭にもザバリと被ると、成る程確かに少し白く濁ったお湯が赤みを帯びた。



「…暗殺か?」

「うん。」



何気なく返事する佐助。
彼の仕事は本来、暗殺が主だ。

丁寧に何度も湯を掛けて髪から血を流すと、漸く佐助はほぅ…と安堵したような溜め息を零す。



「幾ら忍でも、血の臭いは嫌いか?」

「んー…髪に付くと風通りが悪くなってイヤ。一応、忍にとっちゃ髪だって重要な感覚器官なんだよ?」

「猫の髭みてぇだな。」

「うん、おんなじー。」



へにゃりと笑って爪先を湯に浸ける。
端正な顔を少々歪めながら、佐助はゆっくりと、本当にゆっくりと体を沈めた。



「ちょっ…元親さん動かないで、お湯揺らさないでっ!」



まだ太股までしか浸かっていないと言うのに、佐助は場所を空ける為に動いた元親に抗議した。
普段俊敏な忍の牛よりも遅い動作に可笑しくなって、元親は腕を掴んで強引に佐助の全身を沈める。



「ぎゃーっ、熱い熱い!!」

「男がこんくらいで騒ぐんじゃねぇよ。」



逃げられないようにガッチリと腕の中に収めてしまうと、佐助は急に大人しくなってしまった。



「佐助?」



何時もなら馬鹿だの何だのと罵って暴れる筈なのに、静かな佐助を不審に思って覗き込むと、きゅっと目を瞑って唇を噛み締め、体を微かに震わせながら熱さに耐えていた。


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