戦国BASARA

□鬼が霍乱?
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「旦那。」



音もなく開いた襖から入る忍、主は苦手な書類仕事にうんうんと唸っている最中。



「ここに松本屋の大福と団子があります。」

「茶を持て、佐助っ。」



呼んでも返事しなかったクセに、なんて思いながら佐助はにっこり。



「うんうん、これに判くれたらあげるよ。」

「いくらでも押すで御座る!!」



こうなる事は予想が簡単についたが、あっさり上手くいくと上司が心配になる。

…この人、絶対に詐欺に引っかかるよね?

ついでに連帯保証人にほいほい判を押しそうで怖い。
そうなったらとっとと里に帰ろう、うん。
非情なれと叩き込まれる忍はシビアだ。

ぽん、と押された朱印は本人でなければ使えないもの。
絶対的効力の証。



「ありがとー、旦那っ。はい大福と団子、ほいじゃ行って来まーす!!」

「ふぉおぉぉ!!美味に御座るぅぅぅぅぅぅぅぅ…ん?」



待てを解除された犬よろしく、大福と団子に飛びつく主を尻目に忍は姿を消す。
濡れたように煌めく黒い羽根を残して。



「…佐助は何処に行ったのであろうか?」



もぎゅもぎゅもぎゅ、頬袋(←)に大福と団子を詰めながら首を傾げた所にスパァーンッと襖が開く。



「幸村様っ。」

「うぐっ、げほげほ!鎌之助?!何事で御座るっ。」

「さっちゃんの書類に判、押しちゃ駄目よ!!」

「へ?」



書類?

判?



『これに判くれたらあげるよ。』



ぴらりんと部下が出した紙。
先ほど判を押した気が…。



「………押したで御座る。」

「なんですってぇぇぇぇぇ!!??」

「(゚Д゚;)!?」

「何やってんのよ、幸村様っ。あれ、さっちゃんの有給申請書よ!!」

「ゆ…なんと!!」



これは一大事だ。

猿飛佐助は忍である以上に甲斐に重要な人物、いないとなると困る。



「くっ…はめられたで御座る!」

「あーもー…。orz」



だんっと畳に拳を落とす幸村と、あっさり菓子に釣られた上司に頭を抱える忍…。

佐助がいないとなればこの馬鹿…いやいや手間のかかる上司は忍隊で面倒を見る事になる。
けれど忍だって暇じゃあないのだ、命懸けの任務とバ…主の世話―――その両立がどれほど面倒…いやいや、大変なのかを知り尽くしてる鎌之助。
そりゃガックリくるだろう。



…さっちゃん、なんだって有給なんか取ったのよーぅ。orz



しかも有給期間は10日、そのあいだ主2人が問題を起こさない保証などどこにもない。




















あっさり簡単に有給もぎ取った忍、おっきな鴉に掴まって遠路遥々四国までやって来た。
勝手知ったる他人の城、サクッと屋根裏に侵入してスルスル城主のお部屋の上へ。

お殿様の命令でこの城の忍が彼を排除する事はないし、何よりスキルの高い彼が見つかる確率は極めて低い。



「元親さーん、いるぅ?」



にょこ。
天井板を1枚2枚外し、蝙蝠の如く逆さにあたまを出す。



「あれ…。」




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