戦国BASARA

□上田城お家騒動!
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深夜―――見張りと忍のみ活動している時間帯に、上田城の1室の障子が未だ蝋燭の炎に照らされていた。
城主・真田幸村の隣室は彼を護る忍・猿飛佐助の部屋。
誉を欲しいがままにする出来過ぎた忍は、任務がない日もこうして遅くまで忍術の書物を読み耽る。

たゆまぬ努力が他の追随を許さない、日ノ本屈指の忍を生む。

紙を捲る音も、呼気さえも聞こえない時間はもう数時間続いていた。



(………ん?)



ふと、手が止まる。



(…小さな獣に変化する術ぅ?そんなのなんの役に立つのさ?!)



古の巻物に記された術。
体を小さくするだけではなく、獣に変えてしまうという。



(…敵地の潜入―――って、別に獣にならなくたって出来るし。)



むしろ獣になる事で不便になってしまう場合もあるのではなかろうか?

意味がないように思えたが、そこは指南書。
何かしら意味はあるのだろうし、優秀過ぎる忍は自分が知らない術があるのが許せない。
意外とプライドは高いのだ。



(何々…右手の上に左手で、印を切って…。)



指示通りにいつの時代に書かれたかも、本当に術として完成されてるかも解らない手順を踏む。
ひゅ、と最後の印を切った。

ぼふん…。
もくもくもく、煙が舞い上がる。



「……………。」



ゆっくりと煙が晴れ、佐助は自分の手を見た。

………で?
何が変わったの?

目の前に出した掌は成人男性の手。
細かい傷、荒れた肌…あぁ俺様ってば苦労してんだなと再認識はさせられたが、術が成功した実感はない。



(―――しっぱ…いやいやいや。俺様に限ってそんな。)



なんとも高飛車思考だが、そう思わせるだけ佐助は慎重な男。
手順に間違いがないとなればこれはあれか、眉唾ってヤツ?

いつ考案されたかも解らない術式だ、1つ2つくらいは思いつきで書いたのもあるかも知れない。



(なんだよ…。orz)



こんなものに踊らされるのも向上心が強い故。
眉唾だろうと本当だろうと試してみない事には始まらない。

なんだか急に疲労を感じた佐助はとっとと寝る事にした。
明日も早い。




















ぱちり。
いつもの時間、寝起き抜群の佐助はぐだぐだするワケでもなくササッと薄っすい布団を畳む。

忍のさがなのか、隣の幸村を起こす為にわざわざ天井へ登り…登り?



「?」



1度目のジャンプで天井に届かなかった。
跳躍力が足りなかったかと首を傾げつつ再度ジャーンプ。
今度はしっかり天井裏へと潜り込み、綺麗に掃除された其処を幸村の真上まで進む。

夜更かししたからまだ眠いのかな?
あんな高さ、届かないなんて。

ちょびっと違和感を感じたものの、いつもと変わりない。
体調はばっちり、管理はしっかりしている。



「だんら―――。」



かぽっと天井板を外して蝙蝠よろしくぶら下がった。



「!?」



どたーんっ。



「ぬぁっ?!なななっ、何事でござらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」



多忙な部下が起こしに来たのにも気付かずぐーすか寝てた幸村、腹の上になんか落とされて吃驚。
普通の人ならリバース悶絶ものだが、武田で鍛えられた腹筋は鎧よりも頑丈だった。


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