FF7 SHORT DREAM SIDE・R

□Ballad of Stray Dogs
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彼女は小さく「ありがとう…」と呟き、ジャージから制服に着替える為にシャワールームへと駆け込む。



(…チッ…変なコト思い出しちまったぞ、と。)



いつも余裕たっぷりで飄々としていて、そんな『彼』に子供のように扱われて憤慨していたあの頃。
けれど、ちゃんと1人前のタークスになれたのは、その人のお陰でもあって…。

あの時程、自分の無力さを思い知った事はなかった。

苦い経験を得て、それを繰り返さないようにしようと藻掻く自分がいる。
それが上手く出来なくて、もどかしさにヤケになる時もある。



…自分が、こんなにも人間らしい生き物だなんて、思いもしなかった。



蛍光グリーンのペイントが付いたスーツを着替えながら、レノはふと、そう思った。




















「センセ、ズルい。カノンとデートするなんて。」

「あたしだってセンセに送って貰いたいのにっ。」



翌日、授業の始まりと同時に現れたレノに女子生徒たちはやんやと騒いだ。



「あのな…昨日のシルエッタ・ファイト見てただろ、と?あンだけ走り回って、歩いて帰る体力がカノンにあったと思うか?!」



現役タークス、しかも俊足のレノと3時間ちょっと追い駆けっこしていたのだ。
それで体力が余っていたら、タークスよりソルジャーになった方がいい。

現にカノンは登校こそして来ているが、スカートから覗く生足にはテーピングされていて昨日の激闘ぶりが伺える。
レノがピンピンしているのは現役で、普段から必要な筋肉を使っているから。
ほぼ実戦と言っていい昨日のシルエッタ・ファイトで、普段の訓練では使わない筋肉を使ったカノンは、当然と言えば当然の筋肉痛である。



「送って貰いたかったら、せめて俺とシルエッタ・ファイト出来るくらいの腕になれよ、と。」



えーっ。

不満たっぷりな彼女たちは、口々に無理だと喚き出す始末。



「あーもう、うっせ!オマエらの場合まず的に弾当てられるようになれ、と。」



余所見ばかりしていて、もとい、余所見していたって当てられるのがタークス。
的を掠りもしないのでは、シルエッタ・ファイトする価値もない。




















ひょこり、ひょこり。
階段の手摺りに掴まって、1段、また1段とゆっくり降りる。
人前では、友だちに心配かけてしまうから…と普通に歩いていたが限界がきた。

HR終了後、足が痛くて、一緒に帰ろうと誘ってくれた友だちに用があるから先に帰ってと嘘をついた。


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