FF7 SHORT DREAM SIDE・R

□Ballad of Stray Dogs
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「…なんとなく。先生、煙草吸う時左手で吸うでしょ?」

「………校内は職員室も含めて全館禁煙だぞ、と。」

「通勤の時は?」

「………吸ってる。」



今や公共施設での喫煙は不可能に近い。
分煙化してる所もあるが、とにかく、屋根のある場所では吸えない。
愛煙家のレノとしては不自由極まりないが、そこは神羅きってのエリート不良社員。
屋上に携帯灰皿なんぞ持ち込んでの喫煙、匂いなんて風のお陰で殆どしない筈だった。



「左手、煙草の匂いしたから…もしかして左利きなのかなぁって。」

「俺…オマエの顔に手ぇ近付けた事あったか、と?」

「射撃訓練3回目の時に右手を肩に置いたでしょ、肩が上がってるって。さっき左手で銃渡す時、匂いした。」

「………あンな距離で解るモンか、と?」



顔からはだいぶ離れていたと思う。
確か、彼女の胸元辺りに出した筈。



「…マルボロ、吸ってるでしょ。」



一瞬、表情が固まってしまう。
吸ってる銘柄まで解るのか?



「…パパと、同じ匂いだから。」

「へ、へぇ…オマエの親父さんもマルボロか、と。」

「うん…普段は葉巻なんだけどね。」



葉巻…と聞いて咄嗟に思ったのは、彼女が金持ちのお嬢さんなのだろう、という事。
煙草なんてなくても困りはしない嗜好品。
ましてその葉巻となれば、金持ちの楽しみだろう。



「利き手から潰せ…か。俺も嫌って程言われたっけな、と。」



長期戦が予想される場合、なるべく利き手から潰す―――とある先輩タークスが経験上学んだ事だと、新人だった頃のレノに良く教えてくれた。



その人は、もう3年も前に死んだけれど。



任務中、どうしても敵地に1人が残らなければならなかった。
タークスにしては珍しい、チームを組んでの任務。
当時入ったばかりのイリーナや、まだまだ経験の浅いロッドたちもいた。
その中で最年長、そしてタークス最強と呼ばれた男の下した判断は『後はレノに任せる』というモノで。

彼が、敵地に残った。

それは確実に死を意味する。

けれど彼は。





『オレももう歳なのよ、引退するには丁度いいじゃない?』





軽口を叩いてレノたちを脱出させ、爆炎の中に散った。



「先生…?」

「…ん?あぁ…さ、とっとと着替えろ。もう遅いから送ってってやるぞ、と。」



少々昔の感傷に浸っていた意識が浮上する。

黙り込んでしまったレノを心配そうに覗き込む少女を誤魔化すように急き立てた。


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