紅い月が昇る時
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それはたぶん遠い過去の話。
俺達は仲間で、全員一緒に全国を目指してて…光の中で笑いあっていて、辛い時はたまに泣いて、それから…それから…
あぁ、さようなら…
あははははと泣いた
誰かの足音が聞こえ、体が強張る。
またか…また誰かが…俺のことを…
近付いて来る誰かの方向を睨み付け、獣の様に距離をとった。
そんな自分の行動が可笑しく少し笑えた。
いっそ殺されるなら…
殺されるぐらいなら…
「ブ…ブン太…??」
「っ!?」
そこには予想外な奴が現れた。
なまえだった。
暗くてよく見えないが、足音がゆっくりと近付いてくる。
あぁ、こいつもか…
「お前も俺を殺りに来たのか??」
「え??」
わけがわからないと言った顔で俺を見る。
惚けやがって…嫌になる…
「何言ってるの??私達は仲間でしょ!?そんなことするはずない!!」
仲間??
何それ。
久しぶりに聞いたその文字が可笑しくて笑いが込み上げてきた。
「あははは、お前正気??こいつは俺を殺そうとして来たぜぃ??」
俺は足でもう人ではないそれをおもいっきり蹴り飛ばした。
なまえはひっと声を漏らし、近付いて来ていた足を止めた。
「やっぱり…ブン太が殺し……たの??」
「馬鹿だと思わねぇ??最初に俺を狙って来たのはこいつなのに返り討ちなってんの、まぁ殺されたって文句言えねぇだろぃ」
「ブン太!!」
なまえが声を張り上げる。
何でそんな怒ってんの??
殺すことがこのゲームのルールだろぃ??
「お前も俺を殺りに来たんだろ??」
皆敵…皆俺を狙ってる…だけど…
こいつも皆と同じだと考えると無性に悲しくなった。
「私は誰も殺さない!!ブン太だって殺さない!!」
「嘘ついてんじゃねぇよ!!偽善者が!!」
「私は…」
「殺るなら殺りに来いよ!!」
たちが悪い、そんな前置きをされればされるほど、俺は…俺は…
「っ…私は…ブン太が生きてて…本当に良かったと思ってる…」
「は??」
こいつ…何言ってんだよ…
ゆっくりと近付いて来るなまえに俺は固まった体を動かすことが出来なかった。
皆…自分が一番可愛いに決まってる…人間なんて所詮そんなもので…仲間なんてただの寄せ集めで…なのに…生きてて良かったなんて…馬鹿だろぃ
「あははははははぁあははははははははははははははああははははあひゃははははははははははははははははははあははははははははははははははははあはははははははははは!!」
ウケる、笑える。何考えてんだよ…自分よりも人の心配して、自分の殺す相手に手を差しのべて…なんて滑稽な場面だろう。笑える、マジで笑える。なのに…
なのに…なんでこんな悲しいんだ??
何で俺…泣いてんだよ…
笑い声はいつしか叫び声へと変わっていた。
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