×Mukuro

□罪と罰と、そして夢
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「この世がまやかしならどんなにいいでしょうね」
赤と青の瞳を持つ青年は、うっとりとした様子で窓の外を眺めている。

「そうすれば僕…いや、アルコバレーノ、貴方の存在さえ夢の一つにすぎなくなるのに」
青年は一人ごちた様子でそう呟いて、少し離れた場所にいる赤ん坊に目をやった。

赤ん坊のほうは青年の言葉には反応せず黙っている。
時折、帽子に乗ったカメレオンがごそごそと動いているだけだ。

それはそれで満足なのか、青年の瞳はまた窓の景色に移った。


おもむろに青年は窓の割れガラスを一つ拾うと、それを指の腹で押し潰す。
脆いガラスは青年の指先に小さな傷をつくると粉々に砕けた。

指先ににじんだ血を舐めながら、青年は口角を少し上げて笑う。

「嗚呼…、もしも、これがこの世界を憎む僕への罰というなら。
なんて甘く優しい罰なのでしょうか」
青年の唇には先程の血がうっすら残っている。

「もし、そいつがお前の罪を分かってるならな」
やっと口を開いた赤ん坊は素っ気なさそうに答える。


―永遠に解けない時間の罠に囚われた佳人は笑う。
傍観者は誰もいないのに。


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