×Mukuro

□feeling
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感情なんていらない。
生きてるとたまに思う。

感情なんてものがなければ、怒りもないし悲しむこともない。
だけどその先に待っているのは空虚な入れ物として生かされているだけの一生。


それを否定したいから、人は感情に感謝するのだろう。

怒りがあれば愛する人を守れる。
悲しさがあれば恋人を優しく抱きしめられる。
だから人は喜びもし、泣きもする。

もしかしたらこの恋人に感情がなければ、俺は愛してもいなかったのだろうか?




「んっ……はぁ…あぁ」
口端から自然に漏れてくる声。
赤と青から溢れた無色の液体。
それだけで俺はどうにでもなってしまいそう。

出会い方は決してイイものではなかったけれど。
かわりに、今まで知らなかったコト、教えてくれた。

初めは怖いと、恐ろしいと思った。
二番目は憎いと思った。
三番目は悲しいと思った。
最後は愛しいと感じた。

悲しみを憎しみで覆った、そんな相手だと知ったから。



「つ…なよ……く…」
俺を呼ぶ物欲しげな甘い声。
ワイシャツにしがみつく手が愛しくて、震えた背中に痕が残るくらいに爪をたててみた。

逃げられない、お前のすべてから。
逃がさない、お前のすべてを。

触れた唇に誓った想い。
感情持って生まれてきたことに感謝するよ。


感情がなければ出会わなかった。
お前の痛みも、強がりも知らずに生きていたかもしれない。

だから今だけは、その痛みを消してあげるから。
それだけに溺れて、しがみついてくれていいからな。


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