グレキ別書庫

□An a chance meeting.
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その少年を見たのは、偶然だった。雨の降る寒い日、仕事を終えたグレイブが車で通りかかった夜の公園に『彼』はいたのだ。傘も持たずボロボロのシャツだけ羽織ってブランコに座っている彼はまだ13か14歳ほどの可愛らしい黒髪の少年。だがそんな一人の少年に、グレイブは間違いなく一目で心を惹き付けられてしまっていた。こんな時期、こんな恰好でいるなどにわかには信じ難かったが、どうしても放ってはおけなかったのだ。

「風邪を引くぞ」

「…」

車を降りて静かに近付き、自分の差していた黒の傘を少年の頭上へ掲げる。すると彼はようやく傍の男性の気配に気付いたらしく、ぼうっとした瞳で見上げてきた。

「…新しいご主人さま…ですか…?」

「?よく分からんが…とにかくそのままでは寒いだろう。このコートを着るといい」

質問の意味は分からなかったが、とにかく彼を気遣って自分の羽織っていたコートを彼の肩に掛けてやろうとする。だがその瞬間、糸が切れたように少年の身体が傾き、びしゃりと雨に濡れた地面に倒れてしまった。

「!大丈夫か!…おい…!」

グレイブは自らの傘を放り出し、倒れ込んだ少年を抱き起してコートを羽織らせる。天使のように愛らしい少年が何者なのか分からないが、とにかくこのままではいけないということだけは確かなのだ。雨のせいなのか、あるいは寒さのせいなのか、潤んでいる瞳を少しでも安心させてやりたくて「今、温かい部屋に連れていってやるからな」と彼の身体を抱き上げ自分の車の後部座席へと運ぶ。

「……とてもやさしい…ごしゅじん…さま……」

少年はその温かな腕に抱かれ、淡く微笑んで意識を手離す。










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