キース受け小説02

□get back lovers !U
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政庁に隣接する統合軍庁舎、その国家主席の執務室前の通路を、行ったり来たりしている青年がいた。

「閣下は…まだお戻りにならない…」

主席の側近の一人、セルジュ。彼はもう三日も帰らない国家主席を案じて連日こうして待ち続けていたのだ。できるなら今すぐにでも探しに行きたいところなのだが、いま国家主席の不在をおおごとにしてしまえば隙をついてくるような反乱分子が現れた時に対応できない。
何もできないそのじれったさが堪らず、拳を壁にぶつける。

「セルジュ、壁を壊さないで下さい」

そこへ、もう一人の側近が近付いてきた。

「マツカ…!お前、閣下が心配じゃないのか!?」

「っ僕だって心配です…!ですが…今は…」

怒りをぶつけてくるセルジュを静止させ、庁舎全体にサイオン能力で探査範囲を広げるのだが、そこに求める存在の気配はなかった。マツカとて、もう何度もこうして周囲に悟られないよう能力を駆使しているのに、それでも国家主席を捉えることができないのだ。そうなると、居場所はさらに絞りにくくなる。

「僕だって探しに行きたいんです。けれど…」

理由はセルジュと同じだ。国家主席がいないだけでも非常事態なのに、その側近たちまで行方が分からなくなってはそれこそ大きな問題に発展する。

「サムさんのいる病院やマードック大佐には連絡してみましたか?」

「勿論だ。しかし、閣下は病院にも大佐の所へも行っていないらしい…」

考えうる中で最も可能性が高いところを潰され、彼らに残された手はもうほとんどが無くなっている。
だが二人のため息が重なるそこへ、息を切らして駆け付けた人物が一人。

「キースは…あいつは何処にいる…ッ!」

「!マードック大佐…!?」

いきなり現れた男にセルジュが目を丸くしたのも無理はない。彼がグレイブの遠征先に連絡を取ったのは今朝だ。それからまだ半日と経っていない。それがこんな早さで帰ってくるなど、誰にも予想ができなかったのだ。

「大佐。遠征先のお仕事は、いいのですか?」

任務を放り出してきたとすれば色々問題だろう。何より、国家主席が許さない。だが彼はマツカの問いに息を整えながら「問題ない」と答えた。

「三日前から…急遽予定を詰めて終わらせてきた…」

グレイブが言うにはその任務は本来、一週間ないし二週間もあれば片付けられるものだったという。だがその宙域での活動も終わりかけたころ、広く太陽風の影響が出ている場所に入ってしまったため、そこを抜けるまで約一ヵ月も本部への報告ができていなかったのだ。そこでその宙域を抜けた時その報告も兼ねて三日前、恋人のキースに連絡を入れた。しかし何度試みても、国家主席の執務室へ繋がることはなかったという。
そしてそこでセルジュからの連絡を受け取り、さながら光の速さで戻ってきたのだ。

「それより、あいつの居場所は他に心当たりはないのか…?」

「それが……」

手詰まりの状況だが一応上官の恋人に報告しようとするセルジュ。だが、そこにもう一人の男が近付いてきた。
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