キース受け小説01
□始まりは…2(※)
1ページ/6ページ
見慣れた水槽からの風景。だが昨日から幼子の見る風景の中には光があった。
何処から現れたのかも分からない銀髪の青年が、今日も傍にいて色々な話を聞かせてくれるのだ。
彼が昔話から逸話、様々な物語を語ってくれることが幼いキースにとって唯一の楽しみでもあり、孤独を感じない瞬間でもあった。
「――それから、王子様とお姫様は幸せに暮らしましたとさ…どう?面白かった?」
「うん♪」
満面の笑みで応える子供は、それから少しもじもじした仕草を見せて言葉を続けた。
「…あのね、ぼくの、おうじさまは…ぶるぅなの♪」
そのあまりの可愛らしさにくらくらする青年だが、子供が自分に対しての純粋な好意を持ってくれたことが何より嬉しく、できることなら二人を分けるこのガラスケースを壊して抱き締めたいとさえ思った。
けれどそんなことをすれば自分だけでなくこの水槽に閉じ込められた子供もどうなるか分からない。
自らの欲求を律し、気を取り直したブルーは触れること叶わぬ水槽の外側から手を伸ばした。