キース受け小説01

□始まりは…1
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「……」

ガラスケースの中にある液体に閉じ込められた黒髪の幼子は、うつろな瞳で目の前の光景を見ていた。
何人もの研究員が自分の姿を何度も見ては、入力作業をしたり、こつこつとガラスケースを叩いてきたりする。
それに応えて少しでも手を動かせば、『異常なしだな』などと言って遠ざかる。
幼子が寂しがって手を伸ばしても、彼らはそんなことなど気にもせずまた書類の作成やデータの打ち込みに入ってしまう。

「さみ…し…」

僅かに覚えた言葉で、「だれか」と求めても、誰も見向きもしない。隣を見ても自分に似た青年の『人形』が水の中に漂っているだけ。
そのうち近くに居た人間たちも勤務時間を終えたのか、皆機材を片付けたり必要最低限以外の電源を落としたりして部屋から去っていき、室内は人形たちを生かすための装置だけがブーンという低い音を立てていた。
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