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□ピアス
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「ピアスってさ、痛くないの?」
「は?」


私が急に言った事が理解出来なかったのか
光は一瞬きょとんとした顔をしてすぐに怪訝な顔に変わった


「今度は何ですか、急に」
「え、何その反応」
「先輩が突然何か言い出す時にろくな事ないやないですか」


そんなことはない!と意気込んで返答しようとしたが
色々考えてみると確かにその通りかもしれないと思ってしまった
思ってしまっては最後、結局否定の言葉は出ない


「まぁ、いいじゃん。飽きないでしょー?」
「色んな意味で。で、今度は何ですか?」
「いや、光ってこんな若いうちからピアス開けて何処の不良だよ!ってまず思ったの」
「そんなん千歳先輩にも言ったらどうなんです?」
「うーん、まーそうなんだけど。で、ふとピアスって痛くないのかなーって思ったの」
「はぁ」
「だって耳に穴開いてるんだよ?!それを金属はめてるんだよ?!痛いよねー」
「案外見た目より痛くないですわ、それ大げさ」
「え、そうなの?」
「開ける時に失敗したら激痛走るぐらいですわ」


いや、それを痛いというのではないのかと思ったのだが
この後輩は色んな意味で頑固なので黙っておくことにした
こんなところで言い争っても、開けてない私の負けは見えてるから


「私も開けてみようかなー」
「え……」
「……何その反応」
「いや、先輩は止めといた方がええんとちゃいます?」
「何でよー!どうせ似合わないさ!!」
「いや、誰もそんなこと言ってへんけど」
「じゃー何さ」


そう私がむくれると光はふいに私の耳に手を当てて
そして思いっきりぎゅーっと掴んだ


「い、痛い…!!」
「ほら、先輩痛いんダメなんやから開けられへんですやろ?」
「うー…」
「それに」
「………それに?」
「先輩の綺麗な体に穴開けたないんゆうのが本音ですけどね」


そんなことを真顔で言ってのけるこの後輩が恨めしい
そしてその言葉に真っ赤になる私もどうにかしてほしい


「真っ赤ですよ?先輩」
「煩い、誰のせいだと思ってんのよ」
「オレのせいとちゃいますやろ」
「いや、明らかに光のせいじゃんか」
「オレは事実をありのままに思ったように言っただけなんやから、罪はない」
「うっさい」
「まぁ、ええですけどね。先輩の可愛い顔見れたわけですし」


そう言ってさっさと部活に戻っていく光の背を見ながら
さっきまで触れられていた耳に手を重ねる















ピアス
(ただ、貴方と同じ物を身に着けたいと思っただけなのに)










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