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□グラウンド
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お前が此処からいなくなって、初めて気付いたことがあるんだ。

もう、遅すぎるかもしれないけど。




《グラウンド》




「どうしたんだよ、叶。今日なんかおかしくね?」

心配気にキャッチャーの畠が聞いてくる。
虫の居所の悪かった俺は、返事するのも面倒臭気に生返事をして部室へ向かった。

「おい、叶。今のちょっと畠可哀想やったんちゃう?」

たしなめるように織田が俺に話しかけてくる。

(うぜぇ…)

そう顔に出てたらしく困ったように織田はそれ以上何も言わなかった。

つい一週間前に埼玉の西浦高校と試合をした。結果見事にうち…三星学園が負け、悔しい思いをしたのだが…。

(それだけじゃなかったんだ。悔しいだけじゃなくて。)

西浦には、中学まで一緒だった三橋がいた。
そいつは三星学園の理事の孫かなんかで、贔屓でピッチャーをやってる、と、チームメイトに虐められていた。うじうじした性格もあったんだろうが…。

(それでも、アイツはすごいピッチャーだったんだよ)

三星学園が西浦に負けたとき
(また三橋に負けた!)
っていうのもあったけど、
(これが三橋の実力なんだ!見たか!)
っていうほうが強かった。
嬉しかったんだ。
俺は三星の他の奴等とは違う。常に三橋の仲間だと思っていたし、そう思われてると思っていたから。

(でも、アイツは首を横に振ったんだ。寂しくない、戻らないって。)

瞬間、裏切られた気がした。
(お前には俺はもういらないのかよ…)

その時はそんな気持ちを振り切って笑って別れたさ。
滑稽なほど必死になって。

だって、もうお前は新しいチームで優しい仲間に囲まれてる。

俺だけが執着してたら格好悪いじゃないか。


でも、グラウンドに立つと思い知らされるんだ。

(俺は、此処で独りきりだ…)

畠や織田を前にしてもそう思ってしまう。

どうしようもないんだ。
この片翼がもがれたような喪失感。

(三橋…寂しいよ…。れん…廉、帰ってきて…)

今まで大好きだった場所が俺を孤独に突き落とす。

もう、時間は戻せない。


サミシイヨ…レン…。


誰もいないグラウンドで独り、涙で土を濡らした。

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