☆STORY

□ゲーム
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 その日、私は幼い頃に見ていた悪夢を見た。

広い屋敷の厨房には、一人の若い男。

顔は・・・見えない。

男は、厨房から出ると赤い絨毯が敷かれた広い階段をゆっくりと上っていく。

階段の踊り場には大きな鏡。

その鏡に男の全身が映し出される。

皺一つない黒のタキシードに白い手袋。

首には、赤いネクタイ。

髪は漆黒の闇を連想させるような黒で、肌触りのよいサラサラの髪だ。

後ろ髪は短く切りそろえられている。

横髪は長く、耳の下らへんまであるか。

顔は相変わらず見えない。

片手には火の灯った蝋燭。

階段を上りきると、広く長い廊下が続く。

そして、廊下の途中にある立派なドアの前で男は立ち止まった。

ゆっくりと手を伸ばし、自分の頭より上くらいの高さでドアをノックする。

返事はない。

男はドアノブに手をかけると、そっととを開く。

黒の絨毯は所々赤いしみができている。

私はそれが何か考えるまもなく、わかっていた。

その瞬間、私の眠りはさめた。
いつもそう。

その先を見ることができない。

どんなに先を見ようとあがいても、いつも同じ場面で切れてしまう。



幼いころ、その夢は私にまとわりついてきた。

その頃、血の夢を何度も見ていたせいか、少しも驚かなかった。

ただ、何かが気になって、何度も、何度も思い出しては考えた。

何度考えても、何が気になるのか、どうしていつもみたいに忘れることができないのか、わからなかった。

そうこうしているうちに、時は流れる。
    ・・
私たちの種族の成長は、人間たちより早い。

そして、生命力が一番高くなる年になると、ピタッと成長が止まり、年をとらなくなる。

つまり、死ぬことのない不死身のカラダ。

私はその時期を迎えると、悲劇の気配を辿って私がいた世界を出て、人間界にきた。
          ・・
そして、今のご主人と契約を結んだ。
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