Novel(黒蝶)

□【未定】
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「さて…」



男が自分に近づいてくる。
恐怖が体を支配する。
小刻みに震えていながらも、男から視線を外さなかった。



「聡…」

「っあ…」



温かみの戻った声に名前を呼ばれ、思わず声がでてしまった。



「…可愛い。」



聞こえにくい小さな声で男は言った。



「っは。…な、誰だ…よ」

「俺を忘れたのか?」



俺は記憶を辿った。
自分が生きてきた中で出会った人なのか。



「思い出せよ…。」

「んっ、…ぁ…」



考えている途中に相手からキスをされた。
そこから思考力が奪われていく。
とろけそうな心地に、自然と瞼が閉じられる。
段々と激しくなるキスに、体温が上がる。


苦しいはずなのに…

もっとして欲しいと強請ってしまう。


やっと離れた唇。
自然にゆっくりと開く瞼。


相手の眼は野獣のように光っていた。
その眼に見つめられると体が再び熱くなる。
これ以上熱くなると溶けてなくなってしまいそうだった。



「堪らない…今すぐ、今すぐにでも…」



擽るように耳元で囁かれた。

体を捩ると耳へキスをされた。

俺は顔を背けた途端に眼の端で蝋燭の光に反射した刃が目に入った。


「!?あっっ!!!」

「我慢ができない。おっと…」

「いた…い…」



相手は無理矢理カッターで服を裂いた。
その刃が自分の薄い肌をかすり、少量の血が浮かぶ。



「あぁ…。傷がついてしまった。」

「い…っはぁ…ん、」



男は悲しそうな声で傷を舌で舐めとる。
舌の熱さに傷がジンジンと痛む。
男の息づかいは段々と荒くなっていた。



「はぁ…んん!!ぃや、だぁ…」



男は俺の傷を丁寧に唾液をのせながらなぞっていく。
その繰り返しで麻痺してしまい考える余裕が出てくる。


この男は俺の何だったのか…。
何故この男は俺を攫ったのか…。



「何考えてる?」



男の冷え切った声に体が震え、血の気が引く。



「…随分と余裕だな。」

「っあ゛あぁ!!」



傷に指をねじ込むように抉られる。
当然先程よりも強烈な痛み…意識が飛んだ。





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