小説

□桜吹雪
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炬は日中の大半を部屋で過ごしている。

目が見えないのですることなどあまりないのだが、病で衰弱した体で客を取ることはできなかった。


たまに、話だけでもさせてくれと言ってくる客も居るが、それも炬はすべて断っている。




"彼"以外に、例えどれだけ金を詰まれても売りをするつもりはなかった。


その"彼"も、今はもう居ない。


"彼"の問題だけでも、体力の問題だけでもない。
炬はもう二度と表に出ることはすまいと心に決めていた。



「だってそれが貴女との約束だから。ねえ、"炬"?」



誰も居ない部屋で一人、春を過ぎて青々しい若葉を繁らせる桜の木の方を向いて炬は微笑んだ。
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