小説

□認容の必要性
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この恋は必然だ。



高校に入学して、新しいクラスで、「飛鳥田」なんて珍しい名字だったから、被ることはないと思ってた。

から、前の席に同じ名字の奴が居たことに驚いた。

「お前、飛鳥田っていうの」

「ああ、うん」

いきなり話し掛けられてびっくりしながら頷く。

"飛鳥田"はへえ、と嬉しそうにいうと手を差し出してきた。

「飛鳥田って名字珍しいからさ、被るとは思ってなかったよ、よろしく」

"飛鳥田"は俺と同じことを言った。





「…じゃあ、ここの問題を飛鳥田、解いてみろ」

「はい」

「へぇい」

俺と飛鳥田が同時に返事をした。教師は驚いたようで一瞬口をつぐんだ。

「…ああ、飛鳥田は二人いるのか。じゃあ、飛鳥田幸汰。お前が解け」

「ええっ、俺っすかぁ」

「文句いうな」

ぶつぶつ言いながら幸汰が席を立つ。教師にダメ出しされながら問題を解いていた。

「つか、飛鳥田って二人いたんだな」

「俺気付かなかったよ」

そんなひそひそ話が聞こえてきたが無視した。

自分が目立つ人柄ではないのは自覚しているし、そんなことも言われ慣れていた。

無闇に他人とつるむのも好きじゃなかったし、居るか居ないか分からない、という程度の認識で良かった。

「まあ、いいだろう。戻っていいぞ。ここはテストに出るからな。ちゃんと覚えとけよ」

「うぃ〜」

何度か試行錯誤を繰り返し、やっと正解した幸汰が席に戻ってきた。

「俺数学苦手ーっ」

幸汰は席に座るなり書く気のないノートを閉じて欠伸をする。

「もう少しだし、ちゃんと聞いてなよ」

笑いながら小さく耳打ちすると、唸りながら幸汰はノートを再び開いた。

「さっぱり解んねえ…。テストに出るんだよなぁ。

そうだ、ここンとこ教えてくんね?」

意外だった。

幸汰は俺と違って友達がたくさん居て、明るく誰とでも仲良くなれるようなヤツで、他に勉強できる友達なんてたくさんいるだろうから、頼むんなら俺以外の誰かだと思っていた。

意外だったが、嫌な気持ちはしなかった。

「別に、いいけど」

「マジ?よっしゃ」

授業終了のチャイムが鳴った。
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