小説
□桜吹雪
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「駄目だ、退け!」
「退いたら味方に殺される!」
「全滅よりはマシだっ、退け、逃げるんだ!!」
火薬が爆発し、銃が鉛弾を撃ち出し、人の口からは断末魔が溢れる。
すべてが極彩色の赤。
沈む夕日も身体を染める液体も燃え上がる炎も。
いつしか自分の視界も赤に染まった。
「小隊長っ、追っ手に回り込まれています!」
「あがっ」
自分のすぐ隣に居た隊員が額を銃に撃ち抜かれてもんどりうちながら倒れた。
恐怖を掻き消すために声の限り叫ぶ。
「止まるな、怯むな、走れ、生き残れ!」
家族のために、仲間のために、恋人のために。
無謀とは知りつつも、帯剣を引き抜き、眼前に構える。
自分はまだ死ねない。
望郷に遺してきた想いを遂げるまでは、まだ。