Short小説

□嬉しい気持ちは君のもの
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嬉しい気持ちはもの






雨音がする。



ザァーザァーとまではいかない雨。
それなのに雫は細かい霧のようになって止まることを知らずに後から後から降り注いでくる。

そんな霞がかった外界を教室の窓越しから眺めて、

「今日も雨、か…」

と誰に聞こえるでもなく呟いた。
別にずっと見つめ続けても雨が止むわけじゃないけど、なんか目が離せなくて。だからそのまましばらく眺めていた。

「花井」

横の方から呼ばれる。
出会ってからまだ浅くたって仲間だ。声で誰なのか判断出来た。だから俺は雨に魅入ったまま顔を声の主に向ける事なく返事をした。

「…なんだ、阿部」

返事をした後すぐにやっぱ顔を向けるべきだったかなと思ったけど、阿部と呼ばれたソイツは俺の態度を特に気にするでもなく、

「雨止やまねぇな」

と言って、俺と同じように窓の外を眺めた。


なんで後ろにいる阿部の行動がわかったのかっていったら、それは窓に俺たちの姿が映っているからだ。


「昨日ミーティングやったけど、今日どうすんだ?」

「ん〜、百枝に聞いたら西塔の階段とかで筋トレだってさ」

「そうか」

降り続ける雨。
梅雨時期でもないのに、一昨日から天気がおもわしくない。
雨の勢いはそんなでもないのに霧のように細かい粒が降り注いでいるもんだから、すっかり辺り一面濡れて、案の定グランドは使えなくなった。
しかも雲が厚いのかまだ早い時間でも窓が鏡のようになるほどだ。こうして近くにくれば外を眺められるけど、少し離れれば逆光で全く見えなくなる。
小さい子供ならそれすらも喜んではしゃぐんだろうけど、あいにく俺はもうそんな時期を過ぎてしまった。

今日も止む気配すらない。


野球…、やりてぇな。


心の中で呟いたのか、もしかしたら口に出していたのか。
ただわかることは、今、頭がそう認識したってことだけ。
もうそろそろみんなが集まってくる時間。

とりあえず今日のメニューはどうしようか決めねぇとな。
意識の片隅でぼんやりと思った。

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