過去ログ
□ずっと。
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夏が終わった。
久しぶりのホグワーツ。
1年の大半を過ごすこの場所は、もはや馴染みの場所になりつつある。
「やって来た」というよりも「帰ってきた」という感覚が強い。
ざわめく大広間の中で、僕の目はいとも簡単に君の姿をみつけてしまう。
久しぶりに見た君は、何が気に入らないのか、相変わらずの仏頂面で。
強い日差しを浴びたはずなのに、ローブから覗く手は血色の悪さが目に付いた。
休み気分から抜けきれずにうかれる人々の中で。
友との久々の再会に顔をほころばせる人々の中で。
夏の名残を見せ付けるように、焼けた肌をさらす人々の中で。
君は。
明らかに異質な存在ではあるけれども、たしかに僕の愛しい人であった。
「セブルス」
呼びかけると肩が震えた。
振り返るのを待たずに彼の背に勢いよく抱きつく。
「な!?離せ、ポッターっ」
案の定怒られた。
そんなことぐらいでめげる僕ではないけどね。
「声だけで僕だってわかるなんて!これはまさしく愛の力だね☆」
「ふざけるな!こんなくだらないことをするのは貴様だけだ」
さらに怒らせてしまったみたいだ。
目の前にある耳は熟れたイチゴのように真っ赤になっている。
「セブルス冷たいー。こんなに君を想っているのに……」
わざとらしく泣きまねをしてみる。
ひっかかればこっちのものだ。
「…ポッター、死にたいのか」
期待していたのは慌てふためく可愛い君。
返ってきたのは絶対零度の心臓が凍りつきそうな声。
人生、思い通りにはいかないものだね。
「馬鹿なことを言ってないで、いい加減離れろ」
「いーやーでーすー」
だって、ね。
「ポッター!」
君はそんなふうに怒るけど。
「聞こえません。僕は何も聞こえません」
決して自分から腕を振りほどこうとはしないから。
「聞き分けのない子どものようなことを言うんじゃない」
僕が傍にいないことを、少しは寂しく思ってくれたのかな、なんて。
「子どもで結構、子ども最高、子ども万歳!子どもを笑う者は子どもに泣くんだよ」
ほんのちょっとは、愛しく想ってくれたのかな、なんて、思うから。
「なんだその変な理屈は」
どんなに怒鳴られたって、呆れられたって、嘆かれたって、もうどうしようもないんだ。
セブルス。僕は、ね。
「君が大好きだから放したくなんてないんだよ」
ごめんね。