遙か小説
□月下の宴
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「心配しなくていいよ。泰明殿が目覚めたら、私が送っていくから」
「そうですか?じゃあ、お願いしますね。私たちそろそろ帰ります…藤姫も心配するだろうし」
「神子殿も今日は疲れただろう…ゆっくり休みなさい」
「はい。友雅さんも…じゃあ、また明日」
「ああ…必ず見送りに伺うよ」
皆が帰り、館に静寂が訪れた。
明日、神子は自分の世界に帰ってしまうというのに…
このまま刻が止まればいい…
このまま君の寝顔を見ていたい…
そんなことを考えている私はおかしいのかな…?
「私も焼きが回ったものだね…」
私はひとり苦笑し酒を一口飲んだ。
私の着物に包まれ眠る君は、どのような夢を見ているのだろうね…
階を涼やかな風が渡る。
「月が綺麗だ…」
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