遙か小説

□初体験
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「待てよ!」

イノリが友雅の直衣の裾を掴んだ。

「ん?なんだい、イノリ」

「俺、退屈で死にそうなんだよ。頼むから帰らないでくれ」

イノリは友雅の直衣をしっかりと捕まえていた。

「イノリが私に頼みごとかい?珍しいね…」

「なあ、いいだろ?少しでいいからいてくれよ」

イノリは必死に頼んだ。

「かわいい顔でそこまで言われては、このまま帰れないね…」

「はぁ?そういうことは女に言うもんだろ?」

イノリは呆れた。

「ふふふ…それでは、何をして過ごそうか」

友雅が床に腰を下ろすとイノリが口を開いた。

「あんたはいつも何してんだ?」

「私かい?私は昼間は御所に参内しているが…」

「夜は?」

イノリは友雅の噂の真意を確かめてみたくなった。

「夜かい?夜は…ふふ、イノリにはまだ早い話だね」

友雅は身を乗り出して聞いているイノリを見て微笑した。
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