遙か小説
□初体験
2ページ/10ページ
「待てよ!」
イノリが友雅の直衣の裾を掴んだ。
「ん?なんだい、イノリ」
「俺、退屈で死にそうなんだよ。頼むから帰らないでくれ」
イノリは友雅の直衣をしっかりと捕まえていた。
「イノリが私に頼みごとかい?珍しいね…」
「なあ、いいだろ?少しでいいからいてくれよ」
イノリは必死に頼んだ。
「かわいい顔でそこまで言われては、このまま帰れないね…」
「はぁ?そういうことは女に言うもんだろ?」
イノリは呆れた。
「ふふふ…それでは、何をして過ごそうか」
友雅が床に腰を下ろすとイノリが口を開いた。
「あんたはいつも何してんだ?」
「私かい?私は昼間は御所に参内しているが…」
「夜は?」
イノリは友雅の噂の真意を確かめてみたくなった。
「夜かい?夜は…ふふ、イノリにはまだ早い話だね」
友雅は身を乗り出して聞いているイノリを見て微笑した。