コルダ小説

□以心伝心
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屋上のベンチに座り、徐々に朱色に染まっていく空を見上げている火原。

「だいぶ空が高くなったね。明日も晴れるかな」

火原はそう言って視線を落とす。火原の膝の上では、志水が気持ちよさそうに寝息をたてていた。


先ほどまで日野と三人でアンサンブルの練習をしていたのだが、バタバタとやってきた天羽に日野を連れて行かれてしまい、残された二人は仕方なく練習を止めてこのベンチに座った。

しばらくは曲の解釈について話し合っていたが、志水があまりに眠そうなので火原が膝枕をしてやると、志水はすぐに眠ってしまったのだ。


「し〜み〜ず〜くん」

火原は指先で志水の頬をつついてみる。

「ぅん。か……ゆ」

志水はポリポリと頬を掻き、また夢の中へと戻っていった。

「ふっ」

火原は志水の可愛いさに、笑い出しそうになるのを必死に堪えた。

「こんなに可愛いのに、あの時にはちゃんと男なんだよね……って、俺、何考えてるんだっ!!」

周りはほとんど知らないが、志水と火原は恋人同士。火原が思わず思い浮かべたのは、躯を重ねている時の志水の姿だった。
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