コルダ小説
□雨のち、晴
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俺は窓辺に座り、次々と正門へと流れていく傘の花をぼんやりと眺めていた。
今日は緊急の職員会議が行われるらしく、生徒は授業終了と共に全員帰宅するようにと言われていたので、既に教室には俺しか残っていなかった。
「ねえねえ、どっか寄っていかない?」
「ごめ〜ん。彼氏と約束があるんだ〜」
「何よ、もうデートの約束したの?そういうことは早いんだからぁ」
廊下を行く女子の楽しそうな笑い声を聞きながら、俺は小さくため息をついた。
「彼氏、か。いいな…」
俺には想っている人がいる。
でもそれは打ち明けられる筈もなく、俺の片想いだった。
「帰らなきゃ……」
校舎に人の気配がなくなり、仕方なく重い腰を上げた瞬間、後ろから伸びてきた細い腕に、俺の躯は抱き留められた。
「帰ってしまうのかい…?」
「ゆ、柚木っ…」
「僕のことを待っていてくれた訳じゃないんだね」
「えっ!?そんなことないよっ。待ってたよ……柚木のこと」
そう…俺はずっと待っている……
いつか柚木が俺だけを想ってくれることを……