コルダ小説

□雨のち、晴
1ページ/9ページ

俺は窓辺に座り、次々と正門へと流れていく傘の花をぼんやりと眺めていた。

今日は緊急の職員会議が行われるらしく、生徒は授業終了と共に全員帰宅するようにと言われていたので、既に教室には俺しか残っていなかった。

「ねえねえ、どっか寄っていかない?」

「ごめ〜ん。彼氏と約束があるんだ〜」

「何よ、もうデートの約束したの?そういうことは早いんだからぁ」

廊下を行く女子の楽しそうな笑い声を聞きながら、俺は小さくため息をついた。

「彼氏、か。いいな…」

俺には想っている人がいる。

でもそれは打ち明けられる筈もなく、俺の片想いだった。

「帰らなきゃ……」

校舎に人の気配がなくなり、仕方なく重い腰を上げた瞬間、後ろから伸びてきた細い腕に、俺の躯は抱き留められた。

「帰ってしまうのかい…?」

「ゆ、柚木っ…」

「僕のことを待っていてくれた訳じゃないんだね」

「えっ!?そんなことないよっ。待ってたよ……柚木のこと」


そう…俺はずっと待っている……

いつか柚木が俺だけを想ってくれることを……
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ