コルダ小説
□君が好きだから…
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クリスマスが近づく週末の午後、駅前通りは買い物客で溢れていた。
その人混みの中、志水は楽器店に向かいチェロを抱えて歩いていた。
歩く、と言っても大きなチェロを人に当てないように歩くのは至難の業で、実際のところほとんど前に進めずにいた。
「………仕方ない。今日は諦めよう…」
来た道を戻ろうと振り向いた瞬間、志水は何かにぶつかった。
「わっ…!!」
不意を突かれた志水の体は、チェロと共にどんどん傾いていく。
指を痛める恐れがあるため、手をつくことはできない。志水は倒れることを覚悟して、チェロを守ろうとケースを抱きしめた。
ところが地面に接触するはずの志水の背中は、柔らかい何かに受け止められた。
「痛たたた…間に合った〜。志水くん大丈夫!?」
「…はい、大丈夫です…でも、どうして僕の名前………あれ?火原先輩…?どうしたんですか?」
志水が後ろを見ると、そこにいたのは火原だった。