コルダ小説
□君を想うとき
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―18時。
「あっ!来た来た。月森くーん!」
帰宅しようと正門前に足を踏み入れた途端、聞き覚えのある声に呼ばれ、俺は足を止めた。
先にある妖精の像の横で、火原先輩が大きく手を振っている。それを見た周りの生徒が、俺を見てクスクスと笑った。
少しは慣れたつもりだったが、火原先輩はいつも俺の想像を軽々と越えていく。俺は小さく溜め息をつくと、再び歩き出した。
火原先輩は慌ててトランペットをケースにしまっていた。先程、火原先輩の音が聞こえた気がしたのは気のせいではなかったようだ。
「あっ、ごめんね!!ありがとう」
火原先輩は辺りに楽譜を撒き散らしてしまったようで、数人の生徒が拾うのを手伝っている。
俺は少し離れた所に落ちている楽譜を拾うと、火原先輩に手渡した。
「あっ、月森くんまで…ありがとう。ホント、俺ってダメだよな〜」
火原先輩は楽譜の束を抱えて肩を落とした。
「いえ…」
そんなところが可愛いんですよ…
俺は知らない間に微笑んでいた。