コルダ小説

□狂愛
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春も近くなり、寒い中にも日差しが暖かさを取り戻し始めたある日、火原は柚木の車に乗り自宅へと向かっていた。

「柚木、どうしたの? いきなりうちに来たいなんて」

「ああ、そんなに大した理由はないんだけど。もうすぐ卒業だし、3年間同じクラスだった親友がどんなところに住んでいるのか知っておきたくなってね」

「そう言えば、俺は前にみんなと柚木んち行ったけど、うちには来たことなかったよね。凄かったな、柚木んち!!……あ」

やや興奮気味に話していた火原だったが、何かに気づいた途端にシュンと俯いてしまった。

「火原?」

柚木は首を傾げ、火原の顔を覗いた。

「あ、あのさ……うち、柚木んちみたいに広くて立派じゃないから」

「ああ、そんなことを気にしたのかい? 僕は気にしないよ」

「そ、そう……?」

火原が少しだけ顔を上げる。柚木は笑みを浮かべ、火原を見つめていた。
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