遙か小説
□闇を纏し者
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新月の夜、弁慶は京の街を足早に梶原邸を目指していた。
黒い外套が弁慶の体を覆い隠す。
姿を見られたくない弁慶にとって、闇夜は好都合だった。
梶原邸が見える所まで来た弁慶は、門の前に人影を見つけ歩みを止めた。
「見張りがいましたか…」
弁慶が引き返そうとした時、その人影が動いた。
「弁慶かい…?」
その声の主を弁慶は良く知っていた。
「景時…驚きましたよ。どうしてそんな所にいるんですか?」
景時は弁慶に走り寄ってくると、いきなり弁慶を抱き締めた。
「景時!?」
「君のことが心配で…ホント無事で良かった…」
景時の腕に力がこもる。
「申し訳ありませんでした。約束の期日を5日も過ぎてしまいましたからね」
「何かあったんじゃないかって、ずっと眠れなかった…」
景時は少しだけ体を離し、弁慶に口づけをした。
弁慶は目を閉じ、口内に侵入してくる景時の舌を絡めとった。