遙か小説
□君となら…
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鎌倉の朝、弁慶は景時を探していた。
最近、景時の様子がおかしい。眉間にしわを寄せ、溜め息ばかりを繰り返している。
弁慶が何度聞いてみても、はぐらかされるばかりだった。
弁慶は地面に座り、洗濯物を眺めている景時を見つけた。
「見つけましたよ、景時」
「…君もしつこいね〜。そんなんじゃ、女の子に嫌われちゃうよ」
「ご心配なく。今は、そのようなものに興味はありませんから…」
弁慶はニッコリと微笑んだ。
「景時、今日は僕と二人で出掛けませんか?」
「えっ?」
景時は横に立つ弁慶を見上げた。
「フフ、そんなに警戒しないで下さい。僕が景時と出掛けたいから、お誘いしてるんですよ」
「そうだね。最近、二人だけで会えなかったし…いいよ、出掛けようか」
景時は意外にも快諾した。
「では、支度をしてきますから、一刻後に八幡宮の入り口で会いましょう」
「え?何で待ち合わせ?すぐに行こうよ」
「待ち合わせした方が、きっと気分も盛り上がりますよ」
「分かったよ。一刻後に八幡宮ね」
景時も弁慶の微笑みにはかなわなかった。