遙か小説
□ただ一つの言葉
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私が何故怨霊になったのか…
その理由をここに書き残そう。
それを語るには、三年前に遡らなくてはならない…
それは私がまだ十五のときだった…
―ただ一つの言葉―
その日、私は小高い丘の上にある草原にいた。
ここは風が心地良く、とても静かで私の安息の地になっていた。
私がいつものように大きな木の根に座り、笛を奏でていた時だった。
「よう、悪いが助けてくれないか…」
「ひゃっ!!」
私は突然の声に驚き、思わず手から笛を落とした。
振り返ると、男が木漏れ日の中、木の幹に手を付いて立っていた。
「わりぃ。驚かせちまったな」
彼は申し訳ないという顔をしていた。
「え…あっ、いえ…」
私がやっとの思いでその言葉を紡ぐと、彼は困ったように笑った。
「すまないが、ここはどこなんだ?何かに流されて、気づいたらここにいたんだ」
「…ここは木曾だが…」
「木曾!?どこだそりゃ?それに…」
彼は私を上から下まで見回した。