遙か小説
□月下の宴
1ページ/11ページ
今宵は一段と月が美しい…
隣に君がいるからかな…?
―月下の宴―
鬼との最後の戦いを制したことを祝い、私の館では八葉の皆を集めて、ささやかな宴を催していた。
「友雅さん。私たち…」
「しっ…」
明るい声で駆け寄ってくる神子に向かって、私は人差し指を立て唇に当てた。
「…泰明さん、寝ちゃったんですか…?」
「あっ、ホントだ…きっと、疲れてたんだね」
神子の背中から詩紋が顔を出す。
「こいつも寝るんだな」
「当たり前だろっ。何言ってんだよ。天真は…」
「天真、イノリも静かにしろ」
「頼久の言う通りですよ。二人ともお静かに」
「あの…でも泰明殿をこのままと言う訳には…」
八葉の勤めは終わった。
八葉が会うこともなくなる。
もう、こんな会話を聞くこともないのだろう。