遙か小説
□儚きもの
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今夜も弁慶は眠れずに、何度も寝返りをうっていた。
「またですか…」
最近、弁慶の躯は夜になると必ず疼きだす。そのことに弁慶は困り果てていた。
「いい加減にしてほしいですね…」
弁慶は諦めたように躯を起こした。周りでは九郎たちが寝息を立てている。
「…?」
寝床の一つが空いているのに気づいた弁慶は、ある物を荷物から取り出し、立ち上がるとその人物を探した。
「景時。眠れないのですか?」
弁慶は陣の隅で、椅子に座り何か考えこんでいる景時を見つけ、声をかけた。
「…っ!!弁慶か〜。驚いたよ〜」
「それは、すみませんでした。何か考え事ですか?お邪魔でしたら僕は…」
「いや、いいんだよ〜。大したことじゃないからさ」
景時は明るい声で答えた。
「それなら…どうですか?」
弁慶は持っていた酒を出した。
「そうだね、もらおうかな…」