遙か小説
□獲物
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とある夜、九郎は腕の痛みで目を覚ました。
「っ…何だ…どこだ!ここは!!」
ジャラ…
音のしたほうを見上げると、太い木に鎖で縛られる自分の両手が目に入った。
「…これは一体…?」
九郎は鎖から手を外そうともがく。だが鎖はビクともせずに、逆に九郎の手首を締め付けた。
「痛っ…どういうことだ…?!」
九郎は混乱する頭で必死に記憶を辿る。
夕べは景時、弁慶、敦盛、ヒノエと少し酒を飲みながら明日の戦略を話し合っていた。
「あいつらは…みんなは無事なのか!?」
まだ夜だということは、あまり刻は経っていないのだろう。
「誰か!!いないのか!!」
九郎は焦れて声を上げた。
「目が覚めましたか?早かったですね…薬の量が少なかったかな」
暗闇から足音と共に声がした。
「弁慶!!無事だったのか…みんなは!?」
「え?ええ、皆さんはゆっくり休んでますよ」
弁慶は微笑んだ。