しりあす?
□泪の魚
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花井と阿部がジャングルジムに駆け寄った。
少し離れた所で見ていた栄口は走り寄りたい衝動を無理矢理抑えた。
「栄口は行かなくて大丈夫なのか?」
ジャングルジムの方から歩いてきた泉が栄口の隣に腰を落とす。
「一応副主将なんだからな、お前」
「見てたけど、どこも打ってなかったし。阿部と花井が行ってるから」
大丈夫だよ。そう栄口は呟いた。
「三橋は大丈夫だろ。尻から落ちてただけだし。そうじゃなくて栄口、お前のハナシ」
「ん?」
「すごく三橋が心配です。って顔で見てるぞ」
それを聞いてシマッタと思い、慌てて自分の顔を触ってみる。が、鏡もないのに表情筋がどうなってるかなんてなんて全然分からない。
「やっぱり」
またハッとする。泉に栄口はハメられたのである。
「汚いなぁ」
「そうか?」
嫌な空気になってきたな、と栄口はひとりごちた。
「最近、栄口は三橋を避けてるよな」
(ほら来た)
予想通りの泉の言葉に思わず苦笑する。
「別に避けてなんかないよ。たまたま話す機会がなかっただけ」
そんな栄口を、ふーんと泉がしばらく眺めていたが、しばらくしたのち、すいっと視線を三橋の方に向けた。