しりあす?
□メルト
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大雑把に頭を拭きながら鈍い頭をフル回転させて三橋は考え始めた。なぜ泉がここにいるのか。なぜ三橋に優しくしてくれるのか。自分の手にはタオル、目の前に泉。でもここは遠い名も知らない場所で―――考えるうちにわけが分からなくなっていった。
「あ、の、泉く、ん…なん、で、ここに?」
聞いてすぐ三橋は後悔した。愚直で単純に他ならない。なんで自分はもっと気のきいた事が言えないのかと心底悔やんだ。
「あ?んー‐。それはだな…」
「?」
チラっと視線を投げかけてきた泉に少し疑問を抱いたが、すぐに消えた。彼に対して何も疑問を持つ必要がないからだ。
泉はいつも三橋の事を考えていて、三橋が安心して話し行動できる雰囲気を作ってくれる。それに気づいたのは6月も半ばだったけれど。気づいてからは泉と話す度に体が温まる心地よさを味わった。
「あっ、ごめ、んっ。話を、」
三橋が思いにふけっているあいだ黙りこんでいた泉。しかしその眼差しはやわらかい。
「いや、ごめんな。話してる最中だったな。えっと、ここにいる理由だったな」
「う、ん」
「あー、その。…お前、電車に乗ってただろ?」
泉が確かめる様に問いかける。