しりあす?
□メルト
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「くくっ…。なにほうけてんだよ三橋」
温かい声を投げかける彼。三橋は夢を見ているのかと思った。今さっき彼に会いたいなんて考えていたから、幻を見ているのではないかと。
「おい、大丈夫か?寒いのか?」
「い、泉くん…」
やっと彼の名前を呼んだ。
―――泉。名前を呼んだだけで心があたたかくなる不思議な人。目の前には傘をさした泉が立っていた。それが三橋にはまだ信じられなかった。
「ほん、と、に泉、くん…?」
「何言ってんだよホントもクソもないだろ?」
おどけて泉が言う。
「じゃあなんだ、俺は偽物で、これから三橋にやろうとしてるポケットの飴もニセモノなんだな?」
「ほ、ほんものっっ」
「ははっ、そうだよモノホンの泉だよ。でもワリ、ほんとは飴ないんだ」
少しがっかりする三橋。その食べ物への執着心は、日頃からチームメイトを驚かす程だった。
「飴はないんだけどな、」
言いながら、泉は軒先に入ってばさばさと傘をたたんで、カバンから物を取り出した。
「ほら、これっ」
差し出されたのはマフラータオルだった。三橋はそれを何も言えずに受けとる。
「ちゃんと拭いとけよ」
「あ、ありが、とう!」
「いーえ」