しりあす?

□泪の魚
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渇れるほど泣いた。
そして俺は涙の海で溺れるんだ。魚のようにパクパク水面に口をつきだして、必死に息をしようともがく。そうやって俺は日常を繋いで生きてきたんだよ。

どうかその大きな澄んだ瞳で俺を惑わせないで―――



泪の魚



栄口はプクッと頬を膨らませながら笑いをこらえていた。

灼熱の日差しの中、球児達が汗だくで練習していると、時が経つのも早かった。あっというまに日が落ちて、あたりが真っ暗になる。肌をなでる夜風がぬるくて、少しくすぐったいような、それでいて体の熱気を冷まそうとしてくれているようでもあった。

そんな中、西浦高校の球児達は校舎寄りの明るい好地で、ジャングルジム氷鬼をやっている最中であった。

「ぷくくっ」
ついに声に出してしまった。これも練習の一貫なのにっと気をひきしめようとするが…栄口の視線の先、ジャングルジムで逃げまどう三橋のあの悲壮な泣き顔を見ていると、つい笑いを堪えきれない。体が震えてしまう。



猿の様に勢いよく棒に飛びついて、つるんと手が滑りる三橋。オシリから土の上に落ちた。
「わひゃっ」

「ぶっふ!」
その奇声に思わず笑ってしまう。が、すぐに三橋にケガはないか心配になる。
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