文2

□今はただ、
1ページ/1ページ


気が付いた時には、俺は一人になっていた。


抑えられない衝動に従い、人を、物を、自分を、壊せる全てを壊し尽くした。

返り血か自分の血か、判別出来ない赤に染まった両腕を、いっそ切り落としてしまいたいと思った時期もある。

だが、大嫌いな『暴力』を自分の『力』にする事を覚え、ただ壊すだけだった両腕でも、何かを守る事が出来ると知った。


そして俺は、独りでは無くなった。


壊すばかりのこの腕を、好きだと言ってくれる人が居る。
怖がらずに、笑いかけてくれる人が居る。
どんなに渇望しても、手に入れられなかった暖かい感情を、与えてくれる人が居る。

もう、誰かを愛する事など出来ないと思っていた俺を、彼女はいともたやすく変えて見せた。


多分、俺はもう彼女の居ない世界で生きる事は出来ないと思う。

だからこそ、俺が触れてはいけない。

俺が、汚してはいけない。


彼女に笑っていてほしいと願う限り、俺はどす黒い欲に塗れたエゴを殺して、『友人』という鎖に縋り続けるだろう。





側にいてくれ。
ただそれだけでいいんだ。

今は、それだけで。



お題提供:空想アリア

(ブラウザバック推奨)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ