文2
□飽和砂糖水
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ふわり、甘い匂いが鼻孔を掠める。
ゆるゆると浮き上がっていく思考の中で、自分が眠っていた事に気が付いた。
「あ…起こしちゃいました?」
「……いや…」
ソファーに座ったまま、うたた寝していた俺を覗き込むように立つ女が、柔らかく微笑む。
まだ、何処かぼんやりとする思考のまま、彼女の腕を軽く引き寄せ、横向きに抱えるような体制で膝に乗せた。
「わぁっ!」
突然の行動に驚く彼女の身体に腕を回し、傷付けてしまわぬようにそっと力を込める。
密着した身体から、先程の甘い匂いが漂い、小さく鼻を鳴らす。
「…なんかいい匂いがする」
「あ、さっきクッキー焼いたから、そのせいかも」
「後で持ってきますね」と笑う、何処か少女の面影を残す彼女に擦り寄ると、華奢な掌がそっと俺の髪を撫で梳いた。
「…何だか、今日は甘えたですね。静雄さん」
クスクスと柔らかく微笑み、慈しむような仕種で丁寧に髪を撫でる感触に、トクリと甘く鼓動が跳ねる。
「………いや、なんか…幸せだなって思ってさ」
込み上げる感情を改めて言葉に乗せた瞬間、無性に照れ臭さが込み上げ、恐らく情けない表情になっているであろう顔を彼女に見られぬように、その首筋に頭を押し付けた。
飽和する程、
砂糖を混ぜて
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