お題消化
□04
1ページ/1ページ
「…絵文字ってさぁ」
「どうした、いきなり」
「種類が多過ぎてイマイチ把握出来ないんだよねぇ」
携帯片手にふと思った事を口にして、へらりと苦笑を浮かべた。
普段、絵文字を滅多に使わないモノクロなメールを送ってる私に、メタルマンは納得したような視線を向ける。
「…だから、お前はあまり使わないのか」
「うん、てか使いこなせないだけなんだけどね」
「それにさ、ハートとか使うのちょっと恥ずかしくてね」と続け、カチカチと文字を打つ。
世話しなく親指を動かし、画面に『送信完了』の文字が浮かぶのを確認してから携帯を閉じた。
一瞬の間をおき、メタルマンの携帯のバイブが響く。
手慣れた指先が携帯を開く音を、視線を向けずに聞いた。
「…………」
流れる沈黙に、内心バクバクと暴れる心臓を必死に抑えながら静かに息を飲む。
「っ、きゃ!」
「…俺もだ」
不意に伸びてきた腕に、後ろからすっぽりと抱きすくめられ、耳に触れた唇から直接鼓膜に響く低音。
完膚なきまでに熱を持つ頬を感じながら、絵文字の力をほんの少し実感していた。
絵文字
(ハートの揺れるダイスキの文字)