お題消化
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もう何度目になるか分からないが、私は今一度ノートを開き文字列に目を滑らせる。
明日の手順や小論文のポイントなどを綴った黒鉛を脳に刷り込み、深く深く息を吐きだした。
今まで、自分なりに精一杯努力はしてきたつもりだ。
だが、それは独りよがりな自己満足で、もっともっと頑張るべきだったのではないか。
私は、本当に最善の努力をしていたのだろうか。
支えてくれた人達を、裏切ってしまうんじゃないか?
私が追い掛けている背中は、途方もなく遠い存在なのではないか?
明日の事を思い、黒く重い圧迫感が内側に競り上がり、胃がギリギリと締め上げられた。
「………ッ、!!」
突如鳴り響いた、聞き慣れた電子音に思考が一気に引き戻される。
知らぬ間に詰めていた息を吐き、ワンコーラスで切れた携帯をゆっくりと開く。
(…あ、)
画面に映し出された『風魔小太郎』の文字に、ドクリと鼓動が跳ねる。
今、私が追い掛けているその人からのメールに、自然と緊張していくのを感じながら、恐る恐る開いた。
[差出人:風魔小太郎
件名:無題
大丈夫。
花は、必ず咲く。]
至極短い、彼らしい文面の最後に添付された写真は、季節外れに狂い咲いた小さな薄紅色の花だった。
たったそれだけの事なのに、じわりと込み上げる感情に従うまま、携帯を抱きしめた私の目尻から涙が溢れた。
入試前夜
(明日は、きっと大丈夫)