お題消化
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「うっわ、すっごい人だね、小太郎君」
「………」
「…大丈夫?」
普段は厳かな境内に集まる、大勢の人波を見ながら思わず声を零す。
人混みを好まない小太郎を気遣うように見上げると、「心配ない」と言うようにフルフルと首を振った。
白い息を吐きだしながら、流されるように列に並ぶ。
年明けに合わせての初詣は初めてだったので、あまりの人の多さに驚きながら、ギリギリまで着物を着るかどうか悩んだ結果、洋装を選んだ自分は正解だったと思う。
「…っ、うわ!」
「………ッ」
混み合う中、列を横切ろうとする人に押されてバランスを崩す。
思わず声を上げ、ぐらりと傾く身体は直ぐに、ガシッと腕を掴まれ支えられた。
「…………?」
「あ、ありがと、小太郎君」
突然の出来事に、少々乱れた鼓動を感じながら見上げると、小太郎は掴んでいた腕を下に滑らせ、そのまま私の掌を覆う。
「えっ?」
「………」
驚いて小さく肩を跳ねさせると、至近距離に揺れる深紅は緩やかに口角を持ち上げた。
繋がれた掌から流れ込む体温に溶かされるまま、私もふわりと頬を緩ませ、握り返す指先に力を込めた。
初詣で
(今年もどうか、手を繋いでいられますように)