文
□バカップルと人は呼ぶ
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「私が先生を好きになったのが先か、先生が私を好きになったのが先か…」
「…何ですか、薮から棒に」
ふと彼女が、思い付いたようにぽつりと呟く。
それを受け、さも当たり前のように言葉を紡いだ。
「そりゃ、当然私でしょう」
「えー!絶対私のが先ですよ!なんせ、一目惚れってヤツですから」
自信満々に身を乗り出す彼女に、何故だか悔しさを感じて、負けじと口を開く。
「それなら間違いなく私が先です!出席簿で写真を見た時から、気になってました!」
「あ、ずるい!私が先ですってば!」
「私が先です!」「いや、私が!」という平行線のやり取りを繰り返しながら、徐々に声量とテンションが上がっていく。
この不毛なやり取りは、お互いの顔が真っ赤に染まった頃、すぐに終わりを迎えた。
「もーどっちでもいいんで、止めませんか!」
「異議なし!」
遠慮なく込み上げる恥ずかしさに、目を合わせながら何とも言えない微妙な空気が流れる。
遂に耐え切れなくなったのか、フイッと視線を逸らす彼女の朱に染まった耳元が目に入り、思わず口角が緩んだ。
沸き上がる感情を言葉に乗せて、声を落とす。
「…でも、間違いなく、私の方が貴女を愛してます」
「なぁっ…!!」
ビクリと身を跳ねさせ、目を丸くしてこちらに視線を向ける彼女を見据え、ニコリと笑って見せる。
これ以上染まれないくらいに赤くなった頬を押さえながら、彼女はじとっとした瞳を向けた。
「………わ、私だって、大好きですよ…?」
「ほら、やっぱり私の勝ちですね」
クスリと笑みを零し、大分体温が上昇している彼女の頬に手の平を滑らせ、軽く引き寄せた。
「私の想いは、『大好き』なんて言葉に納まらない程に、愛してますから」
「………〜っ!!」
恥ずかしさの頂点に達したのか、眉を八の字に下げながら情けなく視線をさ迷わせた彼女は、酷く小さな声音で「先生、ずるいです」と呟いた。
(私だって……あ、愛して、ますもん…)
(………貴女こそ、反則ですよ…ッ!)
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